弁護士 鳩貝 滋

 

「公益通報者保護法」において、公益通報者の保護がされています。

同法は、現在、全部で22条の条文しかありませんが、わかりづらい条文がいくつもありますので、何点か解説をしたいと思います。

⑴「通報対象事実」(法2条3項)

公益通報によって通報者が保護されるためには、通報者が通報した事実が「通報対象事実」に該当する必要があります。通報対象事実は、大きく分けて2つあります。

① 同法および同法の政令に記載されている特定の法律・命令に該当する、犯罪行為となる事実や、過料の理由 とされている事実(同項1号)

② 同法および同法の政令に記載されている特定の法律・命令にて、行政処分違反が犯罪行為に該当するか、過料の理由とされる場合において、当該行政処分を行う理由とされている事実(同項2号)

上記①、②には、例えば不法行為(民法709条)に該当する行為は含まれないということになります。したがって、職場で行われたパワハラやセクハラは、直ちには「通報対象事実」には該当しません。ただし、これらが暴行・脅迫や強制わいせつなどの犯罪行為に該当する場合には、上記①に該当します。

⑵ 保護要件

通報対象者が保護される要件については、法3条各号に定められています。通報先によって、保護要件に違いがあります。

例えば、事業者内部への通報の場合には、「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合」に保護がされることになります(法3条1号)。

他方、通報対象事実について処分または勧告などを行う権限を持つ行政機関等に対して公益通報を行う場合には、(ⅰ)「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合」か、(ⅱ)通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合で、かつ、法所定の書面を提出する場合に保護がされることになります(同条2号)。

上記(ⅰ)の「信ずるに足りる相当の理由がある場合」とは、1号の「思料する場合」とは異なり、通報内容を裏付ける内部資料がある場合など、相当の根拠がある場合を指します。

 

令和4年6月1日施行の改正公益通報者保護法により、常時使用する労働者の数が300人を超える事業主は、公益通報体制整備義務が課されました(法11条1項・2項)。公益通報を含めた内部通報の対応につき悩まれる場合には、弊所にご相談ください。